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スマホ感覚のAR/MR新文字入力法 ― 小型バーチャルキーボードで混雑した公共空間でも快適操作

近年,AR/MR機器の日常利用が大きく期待されていますが,文字入力の手段として広く利用されている空中操作による文字入力は難しく,特に混雑した公共空間など,物理的に手や腕の動きが制限される環境では課題が残されています.空中で腕を動かし続ける姿勢は疲労を招き,ゴリラアームなどと呼ばれています.

我々は親指操作に着目し,小型キーボード向けの新しい入力方式「FanType」を開発しました.入力候補を扇形に提示するとともに,利用者が過去に触れた位置とその後に選択した候補文字との関係を学習して蓄積し,その傾向をもとに次回の触操作時にこれから押そうとしているキーを推定するアルゴリズムを導入しました.これにより,限られた空間でも少ない動きで安定して文字を選択できる仕組みを実現しました.
ユーザ実験の結果,小型バーチャルキーボードの環境で高い入力正確性を維持できることが確認されました.また,親指中心の操作のユーザインタフェース設計により,腕や手の大きな動きを必要とせず,身体的負担が軽減されることも示されました.これらの結果は,ユーザ実験における手の移動距離の計測や腕の疲労感に関する主観評価などの指標から確認されており,手の移動距離(χ²=28.73, p<.001)および腕の疲労感(χ²=12.65, p<.01)において入力方式間で有意な差が認められました.特に、手や腕を動かせる空間が限られる条件下でも安定した操作が可能であり,混雑した公共空間など物理的制約のある場面での利用に適していることが明らかになりました.

本技術は,AR/MR機器の日常生活の中での簡単で精確な文字入力を可能にし,メッセージ送信や情報検索など,スマートフォンに依存してきた行為の代替を可能とする技術となります・狭い空間や混雑した環境でも利用できるため,通勤・通学中など日常生活のさまざまな場面での活用が期待されます.AR/MR機器の社会実装を加速させる重要な要素となる可能性があります.また,小型バーチャルキーボードにおける文字入力設計の新たな指針を示すものであり,今後の空中入力技術や意図推定ユーザインタフェース研究の発展にも寄与することが期待されます.

本研究成果は,IEEE Transactions on Visualization and Computer Graphics に採択され,IEEE Xploreで公開予定です.これに先立ち,3月23日にVR分野のトップコンファレンスである 33rd IEEE Conference on Virtual Reality and 3D User Interfaces (IEEE VR & 3DUI) で口頭発表されました.

左: 混雑した公共空間を想定した環境でAR機器を装着し,限られたスペースの中で親指操作による文字入力を行う様子.右: FanTypeの入力画面推定された候補(この例ではzとs)が扇形に表示され,最小限の親指動作で文字を選択して入力できる仕組み
左: 混雑した公共空間を想定した環境でAR機器を装着し,限られたスペースの中で親指操作による文字入力を行う様子.右: FanTypeの入力画面推定された候補(この例ではzとs)が扇形に表示され,最小限の親指動作で文字を選択して入力できる仕組み